ぺヤングのゴキブリ混入事故の要因を探る検証と、改善項目の提言

ぺヤングの製造工程を確認して検証してみる。

まるか食品の製造工程は、ブコメで教えてもらったWEBサイトで確認しました。

http://parasiteeve2.blog65.fc2.com/blog-entry-1145.html#4


先日のエントリで指摘した画像処理に関してですが、画像処理は行っていたようですね。

ただし確認したところでは画像処理が行われていたのは、製麺工程ではなくて添付物(ソースやかやく等)を入れた後でした。

製麺工程でのチェックは金属検知器とウエイトチェッカーのみだったようです。

このシステムでは、今回のゴキブリ混入はチェック出来なかったでしょうね。

添付物を入れた後で画像処理検査をしても、ゴキブリが添付物の陰になって映っていなかったでしょう。

ぺヤングの製造工程で行われていた画像処理検査は、間違いなく添付物の入れ損ないをチェックする検査で、製麺状態をチェックする検査ではありませんでした。

ちゃんと画像処理を行っていたのに、重要な工程でチェックしていなかったことが今回の事故に繋がった事は明白ですね。

画像処理を導入していたのに、チェックする場所が違ったのは不幸な事ですが、やはり未然に防げた事故だったと考えざるを得ませんね。

製麺後、またはフライヤー出口での画像処理を行っていれば・・・と思うと非常に残念です。


恐らく、まるか食品では過去に「ソースが入っていなかった。」とか「かやくが入っていなかった。」というクレームが入り、それに対応して画像処理機器を導入したのでしょう。この事からもまるか食品がお客様のクレームに真摯に対応していた事は伺えます。

それだけに非常に残念な騒ぎになってしまいました。


製造工程の不備について


まず製品が通過するラインに、異物混入防止の為のカバーがありません。

一般に食品工場では、製品がむき出しで通過する経路には上部に透明のポリカーボネー製のカバーが設置されています。

側面にカバーがある事もありますが、側面のカバーは異物混入を防ぐという目的よりも、作業者の怪我防止の意味合いが強いです。ぞくに言う安全カバーという奴です。

異物混入防止のカバーは、主にラインの上部に設置されています。防虫目的で上部と側面に設置されてるケースもあります。

まるか食品のラインには、私が確認出来た範囲で異物混入防止用のカバーはありませんね。異物混入防止カバーどころか、作業者の安全を確保する為の安全カバーも見当たりません。

これはちょっと・・・作業者の安全を軽視していると言われても文句が言えない状態です。

私が考えていた以上にブラック企業の様相ですね。


また画像の中心付近にアルミ製の扉が見えます。その扉を良くみてください。開きっぱなしですよね。食品の製造工場で扉が開けっ放しなんて通常考えられません。こんな状況ならゴキブリが侵入して来るのは当然と言えるでしょう。


厳しい言い方になりますが、今回の事故は起こるべくして起きた事故と言わざるを得ないでしょう。


生産設備について

生産設備については、古い設備は画像にあるフライヤーと製麺機がかなり古い設備ですが、他の設備は新しい物に更新されているようです。新しい設備に関してはSUS製ですね。新しい設備に関してはカバーが無い事を除けば合格だと思います。

残念な事に製麺機のシーター画像がありません。シーターとは材料をシートにする設備です。

大体3〜5個のローラーで生地を薄いシート状にする機械です。

実は、このシーターという設備は非常に危険な設備です。特に一番最初に生地をローラーに挿入するときが危険ですね。生地をローラーに挿入しようとして指を巻き込まれえるという事故が起きやすいんです。

最初の生地挿入を上手くクリアすれば、後はローラーのクリアランスを微調整するだけですから危険は少ないです。ただしロッドによって生地の醗酵具合が微妙に違うので、ロッドが替わる時には調整が必要です。厚みや重量に関して神経質にならなければ調整自体は難しくありません。

しかし私が一番重要視している設備の画像が確認出来なかった事は残念ですね。


新しいシーターなら自動で調整する機種があるらしいのですが、わたしはまだ見た事がありません。画像の製麺機をみると新しい設備ではありませんから、恐らく人が手動で調整するタイプのシーターだと思われます。

衛生管理のみならず安全管理も杜撰な印象ですから、労災等の発生件数も知りたいところですね。


全体的なイメージ

作業服や帽子の着用などは当たり前の事ですからここでは触れませんが、粘着テープでの作業者チェックやエアシャワー室、空気循環システムの導入など、衛生管理に関しては充分すぎるほどコストを掛けているようです。

ただし”工場の入り口は全て自動シャッター”にしているのに、工場内部にはアルミ扉があったり、先に指摘したように扉が開けっ放しだったり、細かな点で管理体制が杜撰だったり、従業員教育が行き届いていなかったりという印象を受けました。

製品の全品回収と一時的な操業停止は最良の選択だったと思います。


まるか食品に改善案を提言

さんざん長文を書いてきましたが、ここからが本番です。出来ればまるか食品の責任者に読んで欲しい。

安全カバー&異物防止カバーの設置

安全カバーや異物混入防止用カバーが無いのは致命的です。まずは危険箇所の安全カバー、カバーが出来ない箇所については、作業者の手足および衣服が機械に巻き込まれたりしないように、光電センサー等を利用して巻き込み事故を防止するように改善するべきです。

食品衛生も重要な項目ですが、生産現場で最も優先するべきは作業者の安全です。私は15歳の時から生産技術部門で育ちましたが、50歳近くになった今でも安全は何物にも勝ると考え続けています。いわば私の信条といえます。

また異物混入防止カバーも食の安全という意味で最優先事項だと考えます。

場所によってはSUS製のカバーでも良いですが、需要な部分については透明のポリカーボネート見える化をして下さい。

ガラスやアクリル製では割れたり欠けたりして逆に異物になる可能性があります。


設備の部品について

設備に使用しているボルトやビス、ナットなどは少々高価になりますが、SUS製の物に変更しましょう。ユニクロメッキのネジだとメッキが剥離して混入したり、腐食して混入する可能性があります。ネジ類は全てSUS製に変更しましょう。

またエアーや水の配管ですが、これもSUS製に変更するべきです。当然、エルボーやユニオンなどの継手類もSUS製に変更しましょう。画像では一部に腐食箇所が見受けられます。

SUS製部品でも、鉄製部品からもらい錆する事があるので、鉄製の部品と接触するような箇所には注意が必要です。

全てをSUS製にするのが望ましいですが、費用や時間の関係上「はい!そうですね。」って訳にはいかないかも知れませんが、徐々に変更していくという対応では操業再開出来ないかもしれません。最低でも製品が通過する経路だけでも変更するべきです。


画像処理検査について

ソースやかやくの入れ忘れ防止対策として画像処理機器を導入してあるようですが、製麺工程の終わりで一度画像処理検査を行うべきでしょう。

実際に今回のゴキブリ混入事故は、フライヤーの直後で画像検査をしていれば、未然に防げた事故でした。

ただし画像検査でも、ゴキブリの足だけとかを検出する事は無理ですから「画像検査してるから大丈夫!」と安易に安心しないようにしましょう。

麺自体が縮れていますから、ゴキブリの足などは検出が難しいです。

またキノコバエチャタテムシ、コクヌストモドキなどの小型昆虫を検出するのも難しい。

画像検査は、あくまでも比較的大型の昆虫類や異物の検出用だと考えてください。


昆虫類の混入防止

小型昆虫の混入は毛髪の混入に次ぐクレーム要因です。食品製造業者にとって、毛髪混入と小型昆虫混入は永遠の対策課題といえます。

クレームとしては毛髪が圧倒的に多いですが、小型昆虫混入も少なくはありません。

ただしまるか食品の製造現場では空気循環システムを導入しており、工場内部と外部との気圧の差をつける事で、外部からの小型昆虫が侵入する可能性は極めて低いですね。注意が必要なのは原材料や資材に付着して持ち込まれた卵が、工場内部で孵化して工場内で繁殖するケースです。

これは日々の洗浄・消毒・清掃を徹底し、設備裏や配線・配管の隙間、蛍光灯の傘や内部、配電盤内部のチェックを小まめに行って対処しましょう。

壁や天井にSUS板を貼って、工場内を清潔に保ちましょう。その場合は、SUS板のつなぎ目部分に小型昆虫が侵入するので、つなぎ目の隙間をシリコンコーキング等で埋める事が大事です。

食品工場には昆虫の餌になる物が多いんです。工場内は昆虫類にとって食べ物がふんだんにあり、水も豊富なパラダイスなんだと自覚しましょう。


床面の水勾配や水溜り

床面の水勾配は大丈夫ですか?床面に水溜りが出来ていませんか?その水は昆虫が生きる為の命の水ですよ。

建設時はキチンと水勾配があっても、地盤沈下等で床面にくぼみが出来たりします。だからといって床面を全部やり直すって訳には行かないから、水溜りが出来ないような工夫が必要です。

スグに対応出来るような問題じゃ無いので、まずはブラシや刷毛を使って小まめに掃きだすようにしましょう。


フライヤー周り

小まめに清掃してもフライヤーの周辺はスグに油だらけになりますよね。これは本当に頭が痛い問題です。

しかしフライヤー周辺だけでも全面SUSにすれば、清掃も楽になるし綺麗に保つことが出来ます。せめてフライヤー周辺だけでも全面SUSに変えるべきでしょう。


設備や支柱の更新

生産設備や現場の足場や支柱等を更新する時は、SUS製のものに更新しましょう。購入時は高額な出費になりますが、リスクの軽減や更新期間の長期化という事を考えれば、むしろコスト削減といえます。

これも今すぐに対応出来る項目じゃないですが、毎年予算を組んで徐々に改善する方向で考えてください。


従業員教育と意識改革

扉が開けっ放しだったり、床面が汚かったりの画像を確認しましたが、従業員教育はどうなっているのでしょうか?

どんなに企業が設備投資して異物や昆虫の混入防止を試みても、従業員の意識が低いと無駄な投資になってしまいます。

従業員には、安全や衛生教育を徹底して行ってください。衛生管理や防虫対策などの委員会を作り、委員をローテーションさせるシステムにすれば、従業員全員の意識が高まると思いますよ。他にも良い方法があると思うけど、私は定期的に従業員教育を行ったり、衛生・防虫の委員会を作り委員をローテーションさせて、従業員全員の衛生・防虫意識を向上させる方法を考えてみました。


操業再開までに

どれ位の期間、操業停止になっているのか解りませんが、まるか食品では「従業員の解雇は考えていない。」とニュースでみました。

操業停止期間中に賃金の支払いが発生するのは正直厳しいですが、この選択は個人的に高く評価します。

操業停止期間中は従業員教育を徹底させる良い機会だと捉え、この機会に従業員の再教育を行いましょう。

また、各種改善項目を従業員全員で取り組むと、従業員の衛生・防虫意識の向上に繋がると思います。

実際に、自分が汗をかき、手を汚して作り上げた職場っていうのは愛着が沸くんですよね。現場の清掃にも力が入るし、不具合に関する感度も向上します。

自分が稼いだお金で、初めて買った自動車やバイクって愛着があるじゃないですか。初めて手に入れた自動車を「そりゃやりすぎだろ?」ってくらい小まめに洗浄したり掃除した経験が誰にでもあるはずです。


部品加工やカバー製作などは外注になると思いますが、頑張れば自分達で出来るんじゃないか?って思える所は、従業員にやらせてみてはどうでしょうか?

ユニクロメッキのボルトやナットをSUS製のボルト・ナットに変えるとか、安全・異物混入防止カバーの取り付け作業、工場内部で昆虫が繁殖しそうな場所の点検などは従業員でも出来ますよね。

そういう作業を経験させることで、ユニクロメッキとSUSの違いが解らなかった従業員が、ユニクロメッキとSUSの違いが解るようになるし、判るようになれば「あれっ?ここのネジはSUSに変わってないぞ。」という気付きも生まれ、更に意識が向上するでしょう。

カバーの取り付け作業を行う事で「この箇所は危険なんだ。」とか「このカバーは上部からの異物混入を防止する役割りなんだ。」という事が理解出来るようになれば、「この部分にはカバーが必要なんじゃないか?」という気付きが生まれます。そういう事の繰り返しが、製造現場をより安全で衛生に保つだけでなく、より高いレベルに向上させるスキルに繋がっていくと思います。


従業員の再教育や衛生・防虫に関しては、定期的に繰り返す必要がありますが、従業員のスキルアップと企業の戦力アップだと考えて続けて欲しいと思います。こういうのは忍耐が必要ですが継続は力なりです。


いろいろ改善点を挙げてみたけど、スグに対応出来るものだけでも2ヶ月位の期間が必要そうですね。操業再開は早くて2ヵ月後、遅れれば4〜5ヵ月後という事になるんじゃないかな。

改善項目が多すぎるので、優先順位についてはまるか食品の管理者・責任者が考えてください。この優先順位だけは諸々の事情が絡んでくるので、外部の人間が迂闊に口を挟めないです。


以上が、私のぺヤングのゴキブリ混入事故の要因を探る検証と、改善項目の提言です。

ネットで確認出来た製造工程だけしか検証出来なかったので、改善項目は更に増えるものと思いますが、まるか食品の従業員が一丸となって取り組めば、必ず操業再開出来ると考えています。

非常に厳しい状況だとは思いますが、「雨降って地固まる」といいますし、この事故を企業再生のよい機会だと捉え前向きに改善していくことが重要だと思います。このピンチを乗り越えたときはまるか食品が更に強い組織力、製造力を持った新生まるか食品に生まれ変わっている事を心から祈ります。