個人的な佐賀県知事選の評価

佐賀県知事選が終わりました。

自民党公認候補が地方選で3連敗という結果でした。

私個人としましては樋渡氏の改革路線は嫌いじゃなかったし、ツイッターで樋渡氏に煽られた事も無ければ「ひまじんうんこ」という有難くない称号も頂いた事が無かった。彼に対しての嫌悪感は全く無く、ただただ改革者としての姿勢を県政に持ち込んで頂きたいと願っておりました。


保守分裂選挙とはいわないだろう

今回の佐賀県知事選はメディアを中心に保守分裂選挙と呼ばれておりましたが、その表現が正しかったかどうかは甚だ疑問です。

樋渡候補は自民・公明の公認を得ていましたが、彼はどっからみてもネオリベ新自由主義者)であり、とても保守とは言い難い人物です。

安倍首相も小泉・竹中ほどではないにせよ、ネオリベの色合いが強い政治家です。歴史認識などから保守のような印象を持っている人も少なくは無いでしょうが、安倍首相が経済政策に重点を置いた新自由主義に傾倒しているのは恐らく間違いない。だから樋渡候補の公認をしたんだと思います。

たいする山口候補も元総務官僚という事で、佐賀県知事選は元総務官僚同士の一騎打ちだった訳ですが、今回の知事選は投票率の高い佐賀県の選挙とは思えないほどの低投票率でした。恐らく投票率は52〜53%だったのではないでしょうか?

実際に佐賀県内では知事選が盛り上がっていませんでした。

佐賀県内の有権者にとって、山口候補だろうと樋渡候補だろうと県政には大きな変化はないという認識だったのではないでしょうか。

山口新知事がどういう行政を行うのかは未知数ですが、樋渡氏ほどの強権的な改革はやらないでしょう。山口新知事の支持母体は農協ですから、急進的な改革は嫌うと思います。

農協が樋渡氏の急進的な改革路線を嫌うのは当然といえば当然なんですよね。農業は1〜2年毎に方針転換出来るような産業じゃないんですから。

逆にサービス業など比較的方針転換が容易な産業だと、樋渡氏のような急進派に改革を急いで欲しいという願いもあったように思う。


各地域で違いが明らかになった選挙戦

今回の佐賀県知事選の特徴としては、地域ごとに投票傾向が違ったという印象です。

農業中心の地域では山口候補へ、二次・三次産業中心の地域では樋渡候補が得票した。

例外は最大の票田である佐賀市が三次産業が多いにも関わらず山口候補が圧倒した事と、玄海原発を有する玄海町で山口候補が圧倒した事くらいです。

佐賀市に関しては、県内の三次産業が集中している印象がありますが、市街地から少し離れれば広大な佐賀平野で農業が行われています。有権者数は農業従事者が多かったのかも知れません。

玉ねぎやレンコンの生産地として知られる白石町や広大な田園風景が広がる小城地区では山口候補が圧勝していますし、観光業が主要産業の唐津市では樋渡候補が圧勝しています。

交通の要所である鳥栖市では樋渡候補が勝っているし、樋渡候補の地元・武雄市では樋渡候補が圧倒しています。

また武雄市長選では、樋渡元市長の秘書だった小松候補が当選していますし、少なくとも武雄市民にとって樋渡市政は受け入れられていたんだと考えられます。

実際に楽天トラベルの調査ではこんな結果が出ています。
あなたの地元はどうだった?2014年総まとめ!都道府県別 年間注目エリアランキングTOP10
年間注目エリアランキング1位:佐賀県


この結果には樋渡市長の戦略が大きく貢献したと思います。

図書館問題などで注目を集めた武雄市には、県内外の自治体から視察団が殺到しました。

そこで樋渡市長は「どんどん武雄に視察に来て!ただし武雄市内の宿泊施設を利用する視察団を優遇しますよ。」って事を公言しています。

結果的に武雄市の宿泊施設は武雄市図書館問題バブルの恩恵を受ける事になりました。

そりゃ全国から自治体の視察団が来るんだから、武雄市の宿泊施設および温泉施設がプチバブルになるのは当然です。


武雄市長選では樋渡氏の後継者が順当に当選しましたから、引き続き樋渡改革路線が続くと思います。

新しい武雄市長ははてなBlogユーザーなんですよね。

こまっちゃん、走ります!

新市長頑張って下さい。八幡岳の反対側から応援しています。


山口新知事と政府との関係

選挙は利権の奪い合いです。

自民・公明の公認を受けた樋渡候補が落選し、山口氏が新知事に選ばれた事の影響を考えなければいけません。

自民・公明の公認ではない首長に対しては、政府は露骨な冷遇をするでしょう。沖縄の新知事が冷遇されているのは間違いないですし、佐賀県沖縄県の二の舞になるのでは?という懸念を抱かざるを得ません。


しかし沖縄との違いは、新知事の支持母体が農協である事でしょうか。自民党にとって農業関連の支持は重要ですし、簡単に冷遇する事は出来ないでしょう。また佐賀からは選挙区で勝ち上がった古川康議員がいます。比例復活議員しかいない自民党沖縄県連と同じような状況にはならないでしょう。

しかし冷遇はされないまでも、優遇もしてもらえないでしょうから、今後の佐賀県には逆風が吹くでしょう。自民党佐賀県連は郵政選挙でも党本部に叛旗を翻しているし、今回も党本部との溝を感じる対応でした。自民党本部にとって佐賀県が厄介な存在だと認識されているであろう事は容易に想像できます。


山口新知事と政府の関係は現時点では微妙ですが、今後の対応次第では政府と佐賀県の確執が表面化するという危険性を孕んだ関係といえるでしょう。


まあ元々佐賀県中央政府の関係なんて、明治維新直後から微妙といえば微妙なんですよね。司法卿・江藤新平山縣有朋(山城屋事件)や井上馨(尾去沢銅山事件)を追及した時から確執があると考えてもいい。


それでも政府と良好な関係を構築しなければいけないので、山口新知事は難しい舵取りを続けなきゃいけないでしょう。

山口新知事が自民党に対して対立姿勢をとるか融和姿勢をとるかは未知数ですが、今後の県政に大きく影響する訳ですから慎重な判断を望みます。


ぶっちゃけ自民の負け戦

今回の佐賀県知事選に関しては、自民党にとっては戦前から負け戦決定だったんですよね。

仮に樋渡候補が当選していたと仮定しても、樋渡氏が大人しく自民党本部の言いなりになるとは思えない。どう考えても自民党に飼い慣らされるような人物じゃないでしょう。

樋渡氏を公認候補とした自民党ですが、樋渡氏が佐賀県知事になるとやり難くなる自民党議員も少なくないはずです。特に自民党内の保守勢力にとっては厄介な人物。

今回の選挙結果で一番ホッとしているのは農政族を中心とした自民党保守勢力なんじゃないでしょうか。ガッカリしているのは、自民党内のリアリストやネオリベ勢でしょうけど・・・


もし仮に樋渡候補が当選していたとしたら、自民党内で保守勢と新自由主義勢の対立が深まり、巨大与党自民党が内部分裂するというシナリオも考えられた訳ですから、余計な波風が立たぬだけマシだったのではないでしょうか。

そういう自民党内部の問題から推測すれば、自民党本部が山口新知事の懐柔を図る可能性が高いような気がします。

いずれにせよ結果は出たんですから、我々佐賀県民は今後強かで柔軟な立ち回りが求められる事は間違いありません。