日本郵政と八ツ場ダムの類似点と相違点

郵便局で職員と話した

先日、郵便局で書き損じたハガキを交換した話をエントリしました。

ハガキを交換してもらって考えた



その時、職員さんに「郵政民営化して、保険などは顧客の選択肢が増えて良かったよね。」と話しかけた。

彼はニッコリうなずいたのだが、その後で私が「新政権に代わったから、職員の待遇も向上するんじゃないか。」と話すと、少し表情が曇った。



郵便局は日本新党を支持していたはずだった

支持政党から亀井静香金融大臣が誕生したので、郵便局にとっては有り難い話だと思っていたのだが、少し事情が違うようだ。

私が個人的に局長と付き合いがあるからなのか、彼は言い難そうに「方針や手続きの方法がコロコロ変わるほうがやり難い。」と告げた。

個人的な意見なのか、局員の総意なのか判らないが、その若い局員は政権交代によって、やっと慣れてきた手順を元に戻されたり、変更されるのが嫌だったのだろう。

正直に話してくれたので、私としては嬉しい事だけど、私には彼を救う事は出来ないし、そもそもそんな力など持ち合わせていない。

私が保険を変更したときに、親身になって対応してくれた人物なので「なんとか力になってあげたい」という気持ちはあるが、私にどうこう出来る問題じゃ無いんですよね。



郵政民営化で混乱した郵便局員

4年前の郵政選挙自民党が圧勝し、「郵政民営化は国民の総意である」というスタンスで大幅な改革が行われ、方針や手続きの方法が変わった。

局員さんたちは、新しいやり方に馴染むまで大変な苦労を余儀なくされた訳だが、国民の総意だと主張されたら従わざるを得なかった。



そして、今度は政権交代によって、短期間の間に似たような苦労を余儀なくされるのである。

亀井大臣が日本郵政をどのように変えたいのか、詳細が伝わってこないので、現時点では何ともいえないのだが、またしても混乱する事は間違いないだろう。



「時の政府に振り回される日本郵政は、八ツ場ダムに翻弄される住民と似ているなあ。」と感じた。



日本郵政と八ツ場ダムの類似点

日本郵政と八ツ場ダムの類似点は、時の政府に関係者が翻弄される事だ。

もちろん、郵政民営化に伴う局員の苦労は、経済学的にはサンクコストなので、判断基準に含むべきではない。

それは八ツ場ダム建設予定地の長野原町の住民の苦痛もサンクコストである。



よって、採算ベースに乗らないような政策は、改善するか中止するべきなのだ。

人間味の無い考え方だけど、経済学の視点で考えると、人間の感情は一時的なモノであるが故に無視される。

これは、国民の選択結果なので、従わないと言う訳には行かないだろう。



日本郵政と八ツ場ダムの相違点

非常に似ているように感じる日本郵政と八ツ場ダムの問題ですが、大きな相違点がある。

日本郵政は民営化してから4事業全てが黒字になった。



私は「かんぽの宿」などの不採算部門は、サッサと売却してしまえば無尽蔵に赤字を垂れ流す事はなくなるので、黒字化は可能だと思っていた。

しかし、一枚50円のハガキを日本全国津々浦々に配送する郵便事業は、絶対に黒字にならないと思っていた。



しかし、郵便事業も黒字にしてしまった西川氏の手腕は評価している。



この事を書くと、思考停止した人たちが脊髄反射で「かんぽの宿の売却は不透明だから、西川社長はクビにするべきだ」と主張するので一応断っておくが、私は個人的には西川社長を解任するか、指名委員会のメンバーを刷新するべきだと考えている。

ただし、日本郵政の人事と西川社長の実績は混同して評価するべきではないと考えているのだ。

郵政民営化を行い、4事業全てを黒字にした手腕とスキルは評価するべきだ。

しかしワンマンで不透明な経営は、民営化したといっても政府の100%持ち株会社では好ましくないから、社長解任か指名委員会のメンバーを刷新する必要があると考えていた。



評価するべきところはキチンと評価して、悪いところはキチンと改善しなければならない。

西川社長の辞任は、良い傾向だと考えている。本当は指名委員会もメンバーを刷新するべきだったと思うが、西川社長の辞任後は勝手に入れ替わっていくだろうから問題ないと考えている。



話を戻すが、日本郵政は必要な企業で黒字企業なのに対して、八ツ場ダムは目的を失ってしまった事業であり、今後も財政を圧迫する事業である。

ダム建設を中止しても、関係する1都5県に費用弁償しないといけないし、いままで工事した土地の保全を行わなければならない。もちろん住民に対する生活保障費も発生する。

ダム建設を続行しても、多額な費用を要するし、メンテナンスなどのランニングコストも発生する。

八ツ場ダムは、建設を中止しようが、続行しようが多額の費用を要する事業なのだ。

ただし、この問題の本質は「必要か不要か」の一点に尽きる。そして、もはや目的を失った事業であり、不要な事業なのだ。

日本郵政と八ツ場ダム問題の相違点は、日本郵政は必要な事業で、八ツ場ダムは不要。日本郵政は黒字事業で、八ツ場ダムは赤字事業。という事になると思う。



そして、最大の相違点は担当大臣の違いだ。



前原大臣と亀井大臣

前原大臣は、就任直後に八ツ場ダムの建設中止を明言し、ダム建設を中止すれば、建設を続行するより費用が掛かる可能性がある事も理解していて、「たとえ中止した方が多額の費用が必要になるとしても、八ツ場ダム建設は中止する」と発言している。

なおかつ「住民の理解が得られるまでは、法的な手続きには入らない。」と明言している。

前原大臣は、ダム建設に反対する一部の団体に比べて、はるかに正直かつ誠実である。

前原氏の手法は、国交省の予算をあらかじめ決めてから、優先順位の低いものから中止するという手法なのだろう。

方法論には賛否両論あると思うが、各省庁が増額して概算予算請求をしたなかで、国交省だけが唯一減額して請求している。

大いに評価するべき成果を示していると思う。



対する亀井大臣は、脱官僚を標榜する新政府の閣僚でありながら、民間から招聘した西川社長が辞任すると、すかさず元大蔵官僚を後任に指名した。

優秀な人物だからと言う理由のようだが、汚職事件で厳重注意を受けた人物だし、今回の人事は不透明な要素が多い。

ちなみに、斎藤次郎氏は大蔵省を辞めた後、東京金融先物取引所財務省の外郭団体)に天下りしていて、今回は日本郵政に渡りを行うのだ。

私は、亀井大臣は政治家としての誠実さに欠けていると考えている。