電力事情についての雑感

再生可能エネルギー 買い取りの制限相次ぐブコメを見て、さすがにはてなの皆さんは不足しているのがピーク時の電力であり、ピーク時以外の時間帯では供給過多である事をご存知のようだ。

私のように仕事で電気配線をしたり、電子制御をする人間なら当然知っている事だけど、一般の人が蓄電技術の革新やスマートグリッドの実用化に期待してるなんて思ってなかった。


エネルギー問題がそれほど深刻化してきている証拠なんだろうか?


蓄電技術(揚水発電

ちなみに現在有効利用されている蓄電装置というのは揚水発電である。

夜間は電力が供給過多になるので、その余った電力を利用して下流の貯水池から上流の貯水池に水を汲み上げる。

そしてピーク時に上流の貯水池から放流して水力発電を行うのが揚水発電

蓄電というと誤解する人もいるので簡単に説明すると、下流の貯水池にある水を上流に汲み上げる事で余った電力を位置エネルギーに変えて貯めておく施設です。

大きなエネルギーを貯めておく事が出来る反面、効率は今ひとつ良くない。約30%の電力がロスになると言われています。


この揚水発電に変わる効率の良い蓄電装置を考え実用化すればノーベル賞は間違いないと思う。

一般家庭で使用する電力くらいは現在のバッテリーでも蓄電は可能だが、工場や大型ビルなどの消費電力を賄えるような蓄電は無理ですね。

工場の規模にもよるけど、一時間当たり1000kw以上の電力を消費する工場がいくらでもあるんですから、バッテリーじゃ無理。だから揚水発電が必要になるが、揚水発電は上下2つのダムが必要で、ダムの建設なんて簡単には出来ないし時間も掛かる。更にダムには寿命もある。

揚水発電に変わる蓄電装置の開発が望まれるが、実用可能になるのはまだまだ先の話ですね。


スマートグリッド

スマートグリッドの実用化に期待してる人がチラホラいてビックリしたが、私はスマートグリッドじゃピーク時の不足電力を賄うのは無理だと考えています。

スマートグリッドは、「スマートメーター等を利用して余剰電力を不足している地域に送電しましょう。」という発想の電力網だ。アメリカみたいに大きな国土の国ならかなりの効果が期待出来そうだが、日本のように狭い国土では効果は小さいでしょう。そもそもピーク時が同じ時間帯なんだから、どこでも不足傾向になる。更に晴れた地域で作った電力を、曇天地域に送電すれば効果がありそうだけど、日本全国雨模様という日もある訳でそういう日は日本全国で電力不足である。

日本で研究・開発されているスマートグリッドは、現在のロードサーベイの発展型であり、小規模ながらすでに実証実験段階だから実用化はあと数年で可能なのかも知れません。しかしピーク時が同じ時間帯である事、狭い地域なので日本全国にたような気象状況である事を考えると、とてもじゃないがスマートグリッドの実用化がピーク時の不足電力を賄えるとは考えられません。

スマートグリッドが実用化出来れば、根本的な解決は出来ないまでもホンの少しだが現状よりマシになるとは思います。


ただし、ホンの少しの改善を積み重ねる事で解決出来る問題もあるかも知れないんだから、研究・開発に携わる人たちには頑張って貰いたいと思います。


送電網の容量について

現在は一時的に送電網の容量不足と考えられていますが、スマートグリッドを実用化するためのインフラ整備は必要なのですから、近いうちに改善されるはずです。更に揚水発電に代わる蓄電技術が確立されれば、現在の送電網だけでかなり融通が利きそうです。


まとめ

蓄電技術の革新はまだまだ先の話であり、本当に技術革新が出来るかどうかも疑問。

スマートグリッドは現在のロードサーベイの延長線上なので実用化の目処が立つのはそんなに遠い未来の話じゃなさそうだけど、根本的な解決には繋がりそうもありません。


これは私の個人的な意見なのだが、蓄電技術の革新が起きるまでは原発を含めたベストミックスが一番現実的な対応じゃないかと思います。ついでに太陽光発電の買取価格は一刻も早く適正価格に是正するべきです。市場原理を無視した制度を維持する為に消費者に負担を押し付けるのは間違っていると思います。再生可能エネルギーの有効利用は蓄電技術の革新を待ってから行うべきでした。蓄電技術が革新的進歩を遂げるかどうかは疑問だけど、その時は揚水発電用のダム湖を量産するしかなさそうです。