残業代ゼロ法案については考える必要があるぞ!法治国家の穴について

最近話題になる事が多い残業代ゼロ法案ですが、様々な解釈がありますから、良いといえば良いんだろうし、悪いといえば悪いとしか言えません。


そもそも残業手当が無ければ生活に支障をきたすような賃金では駄目なんですから、最初から残業代に相当する賃金を支払うべきなんですよね。そういう解釈なら残業代ゼロ法案は労働者にとって朗報でしょう。


野党やメディアの無能な件

ところが、残業代ゼロ法案に反対してる人たちは「政府はサービス残業を法制化しようとしてる!」と全く見当違いの反対活動をしてるんですよね。これだからリベラル気取りの左巻きリベラリズムが解ってない!と馬鹿にされるんです。

政府に反対するために難癖つけてるだけで、野党やメディアの無能を証明してるに過ぎません。


残業代に相当する金額を最低賃金に含めろ!って法案なのですから、今まで30時間の残業をして月収が30万円の人だったら、残業しなくても月収30万円、残業を50時間しても月収30万円にしましょうという法案なのですよ。その賃金制度なら進んで残業する人はいなくなりますから、残業時間は減るが賃金は同じって事になるでしょう。

仕事の都合上、残業がゼロになるとは考えられませんが、30時間の残業をして30万の収入だった人が、残業10時間くらいで30万の収入になるんですから、労働者にとっては朗報なんじゃないでしょうか?


政府の狙いも甘い件

しかし、法治国家というシステムには穴があり、法で人々を治めようとすればするほど、人々は法の不備を探して利用するものです。

残業代ゼロ法案が法制化されたら、経営者たちはいち早く法の不備を見つけて上手に利用するでしょう。

まだ法制化されてないのでどんな不備があるのかは判りかねますが、人が作るものに完璧なものはありません。間違いなく法の不備な点が発見され、経営者有利に利用される事でしょう。

労働者にとっては、施行後数ヶ月は有難い新法であり続けるでしょうが、その後は経営者が不備を発見し、労働者にとっては不利になるでしょうね。


おそらく、様々な形で労働者の権利が侵される事でしょう。

新しい法律がそういう運命を辿るのは歴史が証明しています。

野党もメディアも、その事を指摘して政府を追い詰めれば良いのに、頭が悪いから話にならんわ!

ご存知のとおり日本は法治国家です。

現代の日本人は法治国家である事と民主主義国家である事が正しい事のように信じ込んでいますが、私自身は常に疑問に感じています。


今回は法治国家について考えてみましょう。


ルールが明文化された解り易い社会

法治国家の最大のメリットはルールが明文化された解り易い社会だという事でしょう。

人が集団生活をする為にはルールが必要であり、どの集落にもルールと言うものは存在しました。


しかし、その多くは明文化されておらず、いわゆる不文律という形で存在したいたようです。


それじゃ解り難い上に、人によって都合よく解釈されてしまうので、結局は力の強い人や地位の高い人の言い分が通り、いわゆる弱者は強者の言いなりにならざるを得ない状況だったと考えられます。

「そんなんじゃイカンやろ?」って事で、不文律を明文化しようとする人が現れるんですね。

世界最古の成文法は長い間ハンムラビ法典だといわれてましたが、ハンムラビ法典よりも古いウル・ナンム法典やエシュヌンナ法典、リピト・イシュタル法典も発見されており、紀元前2000年頃にはそれまでの不文律を明文化して成文法にする作業が行われていたようです。


中国では紀元前536年に、鄭の子産という人が人類史上初めて成文法を制定しています。

鄭の子産が成文法を制定する前にも、自然発生的に生まれたルール(不文律)をまとめた成文法はあったんですが、成文法を制定したのは子産が初めてだったようです。

子産は中国春秋時代の人物ですから、当時の中国は超先進国であり、その中でも子産は天才中の大天才だったのでしょう。


子産は成文法を制定する事で、鄭の国を法治国家にしようとしたんですね。

しかしそんな大天才に対して、晋の叔向は、「鄭は必ず滅びるだろう。政治は人をみて行うものだが、法律があれば人は人ではなく法をみるようになる。どうして国を保てよう」と批判しています。

法律で国を治める法治国家を目指した子産と、宗教観や倫理観で国を治めようとする叔向の違いなのでしょうが、子産の方が現代社会に近い先進的な考え方だと思います。


しかし、叔向の指摘は法治国家の弱点をズバリ指摘してると思います。

宗教観や倫理観で国を治める場合、世論や人目を気にするが故に窮屈ではありますが、なかなか悪いことは出来ませんよね。ところが法治国家の場合、人々は法の抜け穴を探して法に触れないように悪事を働くことが出来ます。


結局、人目を盗んで悪い事をするのか、法の穴を探して悪い事をするのかの違いに過ぎないんですが、法治国家の弱点をズバリ指摘した叔向も天才だといえるでしょう。


それから2500年以上の歴史を重ねた現在、法の穴を探して私腹を肥やす人ばかりが増えたように思います。叔向の先見性たるや恐るべし。


ちなみに、国が滅びると指摘された鄭ですが、紀元前375年、韓に滅ぼされてしまいます。

しかしながら、晋も韓、趙、魏により分割されちゃって衰退し、紀元前376年には滅んでしまいます。

ほぼ同じ時期に晋と鄭が滅んじゃったのですから、子産の理想と叔向の理想はどちらが正しかったと言えるのか解りません。