小沢一郎氏の無罪判決について

テレビの報道では加熱していた小沢一郎氏の政治資金収支報告書虚偽記載裁判ですが、私自身は「小沢氏が有罪になる事は無かろう!」と考えていましたので、今回の一審無罪判決は「当然やろうな」と一人で納得しています。

裁判制度

私自身としては「小沢一郎はとんでもない悪党だ!」と思っていますし、日本国民の大多数が「小沢一郎は悪党だ」と感じていると思います。だからこそ日本のメディアは大騒ぎしているんですよね。

ところが、小沢一郎氏が大悪党だという事と、今回の裁判の判決は全く別物なんです。その辺がメディアには理解出来ていないんですよね。だからあんなに馬鹿騒ぎしちゃう。メディアが馬鹿なのは昔からの事ですから、今回の馬鹿騒ぎも日本のメディアにとっては平常運転の部類でしょう。ところが今回は検察審査会が絡んでいるのでちょっと問題有りかな〜などと考えています。困ったモンです。

裁判制度と言う物はあくまでも一つ一つの事例が法律に違反しているかどうか、またその罪の重さを考慮して量刑を決める制度です。

小沢一郎という人物は全体的には大悪党なんですが、一つ一つの事例(今回は政治資金収支報告書虚偽記載)が法に反しているかどうかは、検察が集めた証拠によって決めるといっても過言ではないでしょう。

そして本件に関してはその検察自身が「この状況では小沢一郎氏を有罪にする事は無理だ!」と判断し、起訴を諦めていた事案です。要するにもともと証拠不十分だったと思うんですよね。

プロの検察が「無理だ!」と諦めていた事案を、ド素人を集めただけの検察審査会が起訴したところで有罪に出来っこないんですよね。

今回の政治資金収支報告書虚偽記載裁判はメディアの報道に乗せられたド素人が「小沢一郎は悪党だ!」って暴走して起訴しちゃったという印象が強い。

折角整備された検察審査会の印象を、本件のみで悪くしちゃったのが残念でならない。

検察審査会の構成を見直すべき

裁判という制度が如何なるものかを漠然としか理解していない私でも、「今回小沢氏を有罪にするのは難しいだろう」と考えていたんだから、本職である検察関係者や裁判官達は、最初から「茶番劇だ!!」と感じていたんじゃないかな。

いくら国民感情を反映させる為とはいえ、検察審査会の構成が無作為に選んだ11人というのは余りにも無謀なシステムではなかろうかと思う。

国民感情を反映させるという趣旨には賛成だ。むしろ今までが余りにも国民感情が軽く扱われすぎていた。だからこそ検察審査会という制度は大事にしなきゃイカン。

出来れば11人のメンバーのうち無作為に選んだ有権者は7名くらいにして、そこに専門知識のあるメンバーを4人ほど加えて11人構成にした方が良いんじゃないかと思うんですよね。

まだ新しい制度なんだから様々な試行錯誤が必要だと思うけど、今回の件で無作為に選んだ11人では明らかに裁判に対する知識が足りない事が判明したんだから、まず11人の構成を見直すべきじゃないかと思います。そういう試行錯誤の繰り返しがより良い制度設計に繋がるのだから、不充分だった点は素直に認め、更なる向上につなげて行きたいものです。

検察関係者

今回の裁判は明らかに証拠が不足していた訳で、検察が起訴を見送っていたのは更に証拠を集めて小沢氏を一発で追い込む為だったと思うんですよね。

特に地検特捜部の人たちって巨悪(大抵の場合、政治家の犯罪)を明らかにする事が使命っていうか、目標なんですよね。だから政治家の犯罪行為については一発で有罪に出来るよう充分な証拠を集めてから起訴しなきゃいけない。モタモタしてたら法務相の指揮権発動で捜査が打ち切りになってしまう可能性が出てくる。

そういう事も考えての起訴見送りだったはずなんです。

それがド素人の暴走によって無謀な起訴になっちゃったんだから、検察の偉い人たちは忸怩たる思いだった事でしょう。小沢氏側のガードも固くなるだろうしね。今回の無謀な起訴のおかげで、事実上小沢氏を追い詰める事は限りなく不可能に近づいたんだから、今まで捜査してきた検察官もがっかりでしょうね。

結果的には検察審査会の不備が小沢氏を助けちゃったんだから・・・・皮肉なものです。

裁判の判決と小沢氏の政治家としての評価もまた別物

今回の裁判では「小沢一郎氏、一審無罪!」という判決でしたが、それは政治資金収支報告書虚偽記載について小沢氏を有罪判決出来なかっただけの話で、政治家としての評価は別物です。そして小沢氏の政治家としての評価を下すのは裁判所ではありません。小沢氏の評価は、我々有権者が選挙で下すのです。小沢氏は岩手第4区選出の議員なので厳密に言えば岩手第4区の有権者が下すのです。岩手の有権者が正しい選択を下してくれる事を期待します。ただし小沢氏の政治手腕は日本の政治家の中では傑出しているのも事実だし、「悪党だから」という理由だけで簡単に切り捨てられるようなモンじゃ無いという考え方も充分理解出来るんですよね。個人的には彼の豪腕によるメリットより、デメリットの方が遥かに大きいと思っているんですが、それは岩手第4区の有権者が判断を下すべきです。



強引にまとめるなら

今回の騒ぎを強引にまとめるなら、裁判所は正常に機能しているようだし、検察審査会も今後の課題がハッキリしてよかったと思います。

地検特捜部の人たちは今までの捜査がパーになった上に、今後の捜査は困難になって一人で貧乏くじを引き受けた印象ですが、長い間独占してきた公訴権に民意を反映させるという新たな試みの最中なんだから生みの苦しみと思って納得するべきでしょう。

小沢一郎氏は不充分な証拠で起訴されたおかげで限りなく黒に近いグレーという一審無罪を勝ち得る事が出来たんで一人勝ちって印象が残るものの、政治家としてはダーティーなイメージを払拭出来ずマイナス要因も大きいと思う。それは次回の選挙でハッキリするでしょう。

勝者無き馬鹿騒ぎだったけど、今後の課題がハッキリしたという点は良かったのかも知れませんね。