「本当の尖閣」映像流出の落しどころ

先日のエントリで、尖閣諸島の映像流出について書きましたが、先日のエントリではこの事件の裁判は是非裁判員裁判で審議して欲しいというモノでした。
http://d.hatena.ne.jp/kunitaka/20101112/1289519704

ところが、15日には映像を流出させた海上保安官を逮捕しないという報道が流れました。

今回は逃亡や証拠隠滅の恐れがないために逮捕を見送ったそうですが、私はぼんやりと「逮捕はないだろうな」と思っていました。

さらに「起訴されないだろうな」と思っています。


私が今回の事件で逮捕見送りや海上保安官が起訴されないと考えているのは、国民世論の後押しがあるからではありません。

法治国家なのだから、世論より法律が優先されるのが当たり前で、違法行為をしたのであれば国民世論が「無罪だ」と騒いでも有罪は有罪である。

ではなぜ私は起訴されることも無いと考えているのか?



違法行為で立件できるのか?

今回の事件は、国家機密に当たる映像を、無断で公開したのが問題視されていますが、あの映像は本当に国家機密だったのでしょうか?

私は、あの映像は国家機密なんかじゃないと考えています。


尖閣諸島付近で中国船籍の漁船が海保の巡視艇に体当たりをした事が本質であって、公開された映像はその証拠映像に過ぎないと思うのです。

既に、中国の漁船が海保の船に体当たりをしたことは報道されていたし、その時の映像がある事も報道されていました。

国民の多くが、中国の漁船が海保の巡視艇に体当たりした事実を知っていたし、事件の本質については報道済みだったわけです。

事件を公開している以上、映像を隠蔽する必要はなく、むしろ早急に公開するべき映像でした。

流出した映像が、機密にするべき性質のものではないのだから、今回の海上保安官の行為を違法と断定する事は出来ないと思うのです。


ぶっちゃけると「立件出来そうにない問題だから、逮捕も起訴も見送ろう」と検察は考えているんだと思います。

立件できなければ不起訴になるんだから、徒労に終わる事が前提で捜査を続ける必要はないんですよね。


不起訴になる事件を時間を掛けて捜査するなんて無駄だし、さらに世論の反発を招くなんてまさに泣きっ面に蜂なんですよね。

そんな捜査は馬鹿馬鹿しくって誰もやりたくないんですよ。

「検察はちゃんと仕事をしろよ!仕事だろ?」と考える人もいるだろうけど、検察としては、この事件以外にも山のように仕事を抱えているから、決してサボっているわけじゃないんですよね。

不起訴前提の事件の捜査より、立件できる可能性が高い事件を捜査したいほうが良いに決まってるんです。

立件するのが困難な映像流出事件を捜査して、「やっぱり不起訴になったな」と後悔するよりも、確実に起訴できる事件を捜査した方が前向きだし、効率もいいはずです。

恐らく、早々に不起訴が決まって捜査を終了すると思います。



不起訴になっても、海上保安官は解雇される可能性が高い

今回の事件で、海上保安官が不起訴になったとしても、解雇は免れないと思います。

刑事事件としての立件は困難でも、内部情報を漏洩したことには違いない。

よって、海上保安庁は流出させた海上保安官を解雇する事になると思う。

逮捕見送りや不起訴になったとしても、刑事事件としての立件が困難だという事であって、海保の内部情報を公開したことは事実なのだから、海上保安庁としては内部情報を無断で公開した保安官を解雇する事になると思う。


組織の決まりを守らなかったのだから、組織としては処罰せざるを得ないと思うのです。


刑事事件としては不起訴相当だが、海保としては懲戒解雇に相当する行為だと判断されると思います。


刑事事件としては不起訴で、海保としては懲戒処分なのか?矛盾しているような印象ですが、事件の経緯を考えると、刑事事件としては不起訴だが懲戒処分という結果になるんじゃないかなと思います。

私は法律に詳しいわけじゃありませんが、事件の経緯や映像の意味を考えると、不起訴だが懲戒処分になると思うんですよね。