さおだけ屋だって潰れてる

さおだけ屋はなぜ潰れないのか?

昔「さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 」って本がベストセラーになりましたよね。

つい最近、本屋で見かけたんですが、未だに売れているんでしょうね。

本なんて、売れなくなったらすぐに返本されちゃうし、本屋に陳列してあるって事は、それなりに売れているって証明ですからね。


まあ、経済学の本と考えれば、流行廃りの無い部類の本だという事も一因でしょうけどね。

たしかに粗利率の高い商品ではありますし、恐らく一日に2本売れれば個人商店なら潰れないくらいの利益は出るんですが、一日に2本売れるような商品じゃないんですよね。

長尺物や重量物は、お店で買わずに、配達してくれるところから買うっていっても、そうそう痛むものじゃないし、需要があるとは思えない。一日2本だって至難の技だと思う。


そこで、さおだけ屋は他の仕事をしているので、一本も売れなくても問題ないと仰る人もいます。

しかし、私が知っている人は本業でやっていたし、ほかに仕事なんかしている素振は無かった。

ただ、ひたすら広範囲に移動しているだけのような感じだった。

今日はA市とB市を回ったから、明日はC市とD市、その次はE市とF市、その次はG・H市って感じで、同じ場所には一年に一度か二度しかまわらない。私が住んでいるところが田舎だから、そのくらいの頻度なんだろうけど、都市部でも同じ場所で商いをするのは3〜5回程度ではないだろうか。



さおだけ屋だって潰れる

そして、なぜこんな話をするかというと、さおだけ屋が潰れたという話を聞いたからだ。

私の知っているさおだけ屋さんが潰れたのだ。

さおだけ屋だって潰れるのだ。

「そりゃ〜この大不況じゃ、さすがのさおだけ屋だって潰れるわな」って話だと思ったら大間違い。


借金は無し、負債総額ゼロの廃業である。


潰れるって事は、負債が大きくて潰れるだけじゃない。黒字企業が何かのトラブルで一時的に資金がショートして、不渡りを出す事だってよくある事だし、大赤字なのにキャッシュフローが潤沢な為、いつまでも生き残っている企業だってある。

ところが、私が知っているさおだけ屋さんは、不渡りどころか手形、小切手の類は扱っていない。すべて現金仕入れであった。

実は現金仕入れが一番硬い。小切手は切ったら翌々日くらいには引き落とされるし、手形は期日に落とされる。その時に当座に金が入ってなかったら、即不渡りである。不渡りを月に2度だすと、銀行取引は停止だったと思うが、事実上一度出したら信用が無くなりアウトである。

現金仕入れは、キャッシュフローは生み出さないが、不渡りなどとは無縁なのである。金が無きゃ仕入れられないだけなのだ。


ところが、私の知っているさおだけ屋は潰れたのだ。

「はは〜ん、計画倒産だな。」と思う人は、なかなか鋭いが、計画倒産する必要が全く無い。借金ゼロなんだから・・・


では、なぜ潰れたのか?

さおだけ屋さんが高齢の為、本人は続けたがっていたが、家族や娘さん達が無理やり辞めさせたようである。

さおだけを売って養ってきた家族や子ども達から、強引にさおだけ屋を辞めさせられたって聞いたら、なんだか切ない気持ちになった。

さおだけ屋さんの気持ちを考えたら、倒産より悲惨な気がする。

「いつまでやれるか判らんけど、死ぬまで頑張ろう」と思っていたはずである。


大不況よりも高齢化の方が深刻なんじゃないかと思う。


気の毒な話だが、枯葉マークの軽トラで、ノロノロ運転されたら家族じゃなくても心配である。

潮時だったのかも知れない。


さおだけ屋だって潰れるのである。