製造業派遣禁止は良いのか?悪いのか

製造業派遣の禁止

社民党国民新党は製造業派遣の禁止を訴えています。

特に社民党が熱心な労働者派遣法改正案ですが、民主党政権になりこの改正案が国会で承認される可能性は高まりました。

小難しい話は抜きにして、私は個人的に労働者派遣法改正案には賛同出来ない。

労働者派遣法改正案

6月23日に発表された改正案
引用:http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/labor/labor0906.htm

(1)法案名の「派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」部分を「派遣労働者の保護等に関する法律」と名称、目的を変更。
(2)日雇い派遣禁止
(3)2ヶ月以下の派遣禁止
(4)派遣先が違法行為を行った場合、「あなたが私の雇用主」と「通告」出来る「直接雇用みなし規定を創設」
(5)均等待遇の確保
(6)マージン率など情報公開
(7)不利益取り扱い禁止など派遣先の責任強化
(8)罰則を現行最高300万円から3億円に
(9)専門業務を除き製造業派遣を禁止する
(10)一般労働者派遣事業は26専門業務以外は常用雇用のみとする
(11)派遣労働者は派遣期間が1年未満でも雇用保険の被保険者とする
などである。

専門業務を除き製造業派遣を禁止する

今回は、この製造業派遣を禁止する案について考えたいと思います。

恐らく多くの人たちは「そんな事になったら、逆に失業者が増えるだろ!」って考えていると思います。

私自身「こんな馬鹿な事をしたら、絶対に逆効果で失業率は跳ね上がり、最低賃金1000円と言う法案まで可決されたら、負の相乗効果で失業率は計算不能なほど深刻化する。」と考えています。

本当に馬鹿げた改正案であり、なにも良いところが無いような改正案ですが、ここで少し考えてしまった事があります。

賛同出来ない改正案である事は間違いないのですが、現状のままでは労働者派遣法も悪法だという事です。

社民党さんは党の方針として、弱者救済を目的にしているのですが、改正案では弱者救済どころか、弱者を今以上に追い詰める事になります。

この事は間違いありません。

しかし、このまま現在の労働者派遣法を改正しなければ、間違いなく日本の経済は近い将来破綻します。

社民党国民新党の考え方は明らかに間違いだと思うのですが、だからと言ってこのままにしておく訳には行かないのです。

物創り大国・日本

日本の経済は物創りによって成長してきましたし、一部の中小企業が持っている技術は、他国の追随を許さないほど突出した技術です。

しかし派遣労働者の場合、殆どが大企業に派遣される事を望み、中小企業に派遣される事を望みません。

しかし、日本が世界に誇る技術や技能は中小企業が担っているんですよね。

そして中小企業が派遣労働者を受け入れたとしても、中小企業にとって命綱ともいえる「特殊技術」や「特殊技能」を派遣労働者に伝承するだろうか疑問です。

私が経営者ならば、いつ辞めても不思議じゃない派遣労働者に特殊技能を伝えようとは思いませんし、数ヶ月で伝承出来るような技能は、そもそも特殊技能とは言わないでしょう。

技術や技能

技術と技能の違いがハッキリしない人が多いと思いますが、両者は似ているようで全く違うものです。

技術とは「技」と「術(すべ)」です。物造りの方法や手順などを指す言葉です。

技能は「技」と「能(能力)」で、物造りの技や能力を指すと私は解釈しています。

簡単に説明すると、★という品物を作る場合、旋盤とかフライス盤、マシニングセンターやNC旋盤、研削盤、ワイヤーカット、放電加工機などの機械を使用し、正確な手順に基づいて作業する事で、★と言う品物を完成させる事が出来る。
という方法や手順が技術だと思うのです。

技能と言うのは、同じ機械や工具、同じ手順で★という品物を作っても、Aさんが作った品物の方が、Bさんが作った品物よりも、精密であったり、所要時間が短かったり、見栄えが良かったという具合に個人的な能力に由来するものが技能だと考えています。

技術と言う物は、誰かが頑張って高質なマニュアルを作れば、何とか文章&図解されて伝承する事が出来ます。

しかし、個人個人の能力を短期間で伝承する事は困難です。

素人の目は誤魔化せても、専門家の目は誤魔化せないものなのです。そんな高度な技能を数ヶ月で伝承出来るわけが無いと思います。

なぜ派遣が望ましくないか

ここまで読んで頂ければ、なぜ派遣が望ましくないか判って頂けると思います。

中小企業の経営者は、派遣労働者に対して自社の命綱である技能を伝承しないし、もし伝承しようと考えても、短期間で技能を伝承するなんて困難なのです。

物造り大国日本から、それを支える技能者が減ってしまいます。

もちろんそれは、日本の経済が衰退する事を意味していると思うのです。

技術はマニュアル化する事で継承出来ても、技能に関してはマニュアル化は困難でしょう。

経験や勘といった部分が大き過ぎます。

さじ加減

製造業派遣の禁止は、間違いなく失業者を増やす事になるでしょう。

しかし、企業が派遣労働者の労働力に依存していては、日本の国内の技能は低下して、衰退してしまいます。

労働者派遣法は、見直しべき法律ですが、勘違いした人たちによる労働者派遣法改正案は、失業者を増やすだけになりかねない。

派遣労働者の雇用を守りながら、一方で正社員または、正社員に準ずる長期間の労働者に技術や技能の伝承を行っていかねば日本の産業や経済は破綻するでしょう。

この「さじ加減」が難しいのですから、社民党国民新党をまとめる立場の民主党は、難しい舵取りが要求されるわけです。

製造業派遣の禁止については、なかなか一筋縄では解決できない複雑な問題を孕んでいるんですよね。